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Talking about Hachinohe vol.1 若林クリス監督

公益社団法人八戸青年会議所創立60周年記念対談

Talking about Hachinohe vol.1

八戸が「氷都」と呼ばれる所以は、地域の独特な気象条件に起因するものだろう。冬は晴天が多いため比較的日照時間が長く、降雪量が少ないかわりに、海から吹く冷たい風で気温はぐっと下がる。厳しい寒さの中で、八戸市民は小さな頃からスケートに親しんできた。その結晶として、数々のオリンピック選手を輩出し、屋内スケート場の建設や、プロスポーツ誕生にもこぎつけた。こうした歴史と文化に支えられる八戸は、まさに「氷都」にふさわしいまちだ。今回は東北フリーブレイズ監督の若林クリス氏との対談を通じて、「氷都」八戸の魅力について探ってみたい。

「アイスホッケーに対する愛情から八戸への誇りを感じた」

 

金入健雄理事長(以下、金入):現在、クリス監督は東北フリーブレイズの監督としてご活躍され、子どもたちの指導へも力を入れられていると思いますが、監督とアイスホッケーの出会い、そして八戸へ来た経緯を教えていただけますか?

 

若林クリス監督(以下、若林):私は東京で生まれ、当時、日系カナダ人2世だった父が国土計画アイスホッケー部でプレーしていました。小学1年のときにカナダに引っ越し、父の影響もあり、私もカナダの小学校でアイスホッケーを始めました。その後、アラスカのアンカレッジで中学の2年間、本格的に競技に取り組み、そこからアメリカのコネチカット州の高校に4年間、大学はミシガン大学で4年間を過ごし、コクド株式会社に入社しました。

 

金入:なるほど。お父様の影響や北米での経験を経てコクド株式会社に入社され、今につながっているのですね。

 

若林:コクドではさまざまな事情があり、当時は外国人を起用しないという方針でした。私はカナダ国籍だったので、リーグには登録されず練習生という立場でした。その年に長野オリンピックへの強化に向けて、カナダから日本代表の監督が選抜され、その通訳としてお手伝いすることになりました。一度も日本リーグでプレーすることがなく、現役が終わってしまったんですよ。

 

金入:通訳からアイスホッケーの指導者としての道が開かれ、現在の監督業につながるわけですね。

 

若林:指導にはもともと興味がありました。大学時代には地元の高校やジュニアリーグなどの手伝いもしていましたし、やはり、父も監督をやっていたので興味はあったんです。

 

金入:その後指導者としての経験を積まれ、今に至るわけですね。クリス監督にとってこの八戸はどんな印象を受けましたか?

 

若林:たくさんの方がすごく心配してくれました。期待も大きかったんですが、何より皆さんが、外から来た私に温かい声を掛けてくれて。きっと待望のプロチームというのもあったのかもしれません。そういう意味では、アイスホッケー文化に対して誇りを持っていると感じました。

 

金入:東北にアイスホッケーのプロチームができて10年になりますが、監督が八戸に来た当初と10年たった今とでは、アイスホッケー文化やスケート文化はどのような変化がありましたか?

 

若林:やはり10年間東北で試合や活動をしてきて、少なからず子供たちへアイスホッケーの楽しさやアイスホッケーを始めるきっかけをつくることができたのかなと。元々競技に対しての愛着がある中で、プロとして魅せるプレーをしてきたことが普及につながったのかとも感じます。

 

金入:実はとても印象に残っているシーンがあるんですよ。2017年の第85回全日本選手権でフリーブレイズが優勝したときです。選手の皆さんが、試合の後に夜通しバスで八戸へ帰ってきた朝、偶然その時アイスホッケーの練習をしていた小学生たちがバスを迎える形になり、その場で優勝トロフィー見せてくれたことがありました。誰よりも早く優勝トロフィーをクリス監督から見せてもらった子どもたちの姿を見ていて、八戸のアイスホッケーの歴史や文化が素晴らしいかたちになったんだなと感慨深かったですね。

テクノルアイスパーク八戸にて

 

「異文化に成長のカギがある」

 

金入:そして、いよいよ八戸では4月末から、第16回フレンドシップ2019PeeWee国際アイスホッケー記念大会が始まりますね。今年は5カ国。アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、日本から総勢13チーム、そしてサポーターも含めて500名前後の海外からのゲストの方が八戸にいらっしゃいます。世界の子供たちは八戸でホームステイします。大会自体もボランティアで成り立つ部分が大きく、私たち八戸青年会議所もそうですが、市やアイスホッケー連盟、八戸商工会議所など多くの方々で大会が支えられます。プロチームの監督として、このようなジュニアの年代からの世界大会へ参加できる機会をどのようにとらえていますか?

 

若林:本当に、すごく素晴らしい機会だと思います。私は父のこともあり、北米や日本で色々な経験ができました。早い段階で、自分のいる世界と違う世界がある、違う国がある、言葉であり、食べ物であり、さまざまな文化があるということを肌で感じられました。試合をやるだけではなく、ホームステイをして、日本の文化を知っていくことは、子どもたちが今までのスタンダードと違うスタンダードに触れることです。視野がもっと広がって、価値観も変わって、広く世界を見る力が身につくと思いますね。人はどうしても居心地の良い場所に居たがるのですが、子どもたちはきっと、いつもとまったく違う環境で自分の殻を破ろうとするでしょう。そういった経験も積めるので、競技だけでなく子どもたちにとっては意義のある素晴らしい大会だと思います。

 

金入:素晴らしいお考えですね。現在、フリーブレイズにも海外の学校で研鑽した選手が増えていますよね。そういう経験は、プロとしての資質につながりますか?

 

若林:そうですね。今の日本のアイスホッケー界全体を見ると、これまで北海道を中心に競技が牽引されてきました。もちろんそのような方々がいたからこそ、これまでの日本のアイスホッケー界は成り立っていますが、今はもっとグローバルに物事を考えないといけないと思っています。同じ育ち方、同じ価値観の中だけでなく、その中に何人か違う道のりを歩んできた選手や、価値観を持った選手が混じる。チームにとっては衝撃的かもしれませんが、さまざまな価値観の中で、切磋琢磨するところに大きい伸びしろが出てくるのかもしれません。

 

金入:面白いですね。チームの中で化学反応というか、多様性が育まれて、選手としてもチームとしてもひと皮むけていくということですね。そう考えると、PeeWee国際アイスホッケー記念大会で子供たちが多様な文化の中で触れ合うということは意義あることですね。

 

「子どもたちの良い模範に」

 

金入:2020年には八戸駅の西口にホームアリーナを構える予定ですが、チームとして八戸とはどのように関わっていこうと考えていますか。

 

若林:やはり、新しいアリーナができることでアイスホッケー、フィギアスケート、スピードスケートなどスケートに触れられる機会をもっと増やせたらなと思っています。子どもたちがスケートを楽しめる文化へ貢献できますし、アイスホッケーの普及や強化にもつながりますよね。

 

金入:特に最近はファンが増え、盛り上がりも増してきていますよね。スケートに親しめる環境が増えることでますます試合が楽しみになりますね。スケート文化を大切に思うこのまちがもっと発展していくといいなと、あらためてお話しを聞いていて思いました。先日、今から40年前に書かれた八戸青年会議所の20周年誌を見返していた所、当時のメンバーによって書かれた現在の状況に繋がる様な文章に出会いました。それはこのまちの未来像を語るものでした。その想像の未来の中では、日本各地でアイスホッケーが盛り上がり、特に東北には日本一のプロチームと大きな競技施設があり、ジュニアチームと女子チームも同様に盛んであり市民が熱狂している。そして、どんどん八戸がアイスホッケーを通して元気になっていくという筋書きでした。40年以上前からアイスホッケーの文化を大切に思ってきた人たちがいて、そういった夢や思いが、子や孫に受け継がれて、フリーブレイズのファンになったり、スケートを始めたりにつながっているのかなとも思っていました。是非、引き続きアイスホッケー、スケートを大切に思っている市民と、フリーブレイズというチームが一体となってまちが盛り上がっていければいいなと思っています。

 

若林:素晴らしい情熱ですよね。私も、キーワードは「子ども」だと思っています。トップチームの監督をやっておりますが、子どもがホッケーをやらなければ選手もいなくなりますよね。子どもがファンになってくれれば長くチームを応援してもらえます。私たちの使命は、子どもたちにどれだけアイスホッケーを好きになってもらえるかであり、フリーブレイズを好きになってもらえるか、そして選手のファンになってもらえるか、というのがすごく大事だと思います。良い方にも悪い方にも、常に影響力を持っているので気を引き締めながら、子どもたちの良い模範になれるようにならなくてはですね。

 

フリーブレイズJrスクールにて

 

 

PeeWee国際アイスホッケー記念大会とは

 

日本の小学校6年生と中学校1年生世代に当たり、同大会は同世代の大会。次代を担う子どもたちの健全な育成とスポーツを通して国際親善、アイスホッケーの技術の向上を図り、スポーツ精神と友情を培うこと、お互いの風土や文化を理解し友情を広げていくことを目的とする。1989年に八戸から始まった本大会は30周年を記念し、4月27日(土)から5月5日(日 )の間、テクノルアイスパーク八戸で開催される。入場観戦無料。

八戸青年会議所とは

八戸市近郊に在住する20歳から40歳までの青年経済人の集まりで「奉仕」「修練」「友情」を活動の基本として「明るい豊かな社会の実現」を目指し、八戸のまちに住み暮らす人々や子どもたちの笑顔のために活動を続けている団体。今年で創立60周年を迎え、現在で約130名の現役会員を擁する。

若林クリス(わかばやしくりす)

1972年東京都生まれ。コクドのメンバーとして選手活動を始める。国籍等の問題で試合に出れない日々が続いていたときに、コーチへの転向の機会を得る。長野オリンピックを終えたあと、アイスホッケーから離れ、4季ほど会社の業務に従事したのちアシスタントコーチとして、2002年の秋にリンクへ戻る。その後、監督としてSEIBUプリンスラビッツ(旧コクド)で2度、チームが解散した翌シーズンからアジアリーグに加盟したフリーブレイズでも3度、合わせて5度のリーグ優勝を飾っている。

 

金入健雄(かねいりたけお)

1980年青森県八戸市生まれ。第63代公益社団法人八戸青年会議所理事長。東北STANDARD代表。株式会社金入代表取締役。東北の魅力やまちの魅力を工芸職人の方々とコラボレーションしながら伝統工芸品のストーリーを生かしたプロダクトづくりやストーリーの発信を行うことで、東北の経済活動を活発化させている。今年度は公益社団法人八戸青年会議所理事長として「新しさの港から未来へ~市民の誇りとなる八戸スタンダードの発信~」をスローガンにまちづくり運動を展開中。

 

 

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