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Talking about Hachinohe vol.3 近藤慶央さん

公益社団法人八戸青年会議所創立60周年記念対談

Talking about Hachinohe vol.3

2016年にユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」に登録された八戸三社大祭は、その昔、凶作に悩み天候の回復と豊作を祈願したことに起源し、まちの安泰や豊作を祈願する大規模祭礼として発展していった背景を持つ。歴史とともに、祭に華を添えるのが豪華絢爛な山車(だし)。精巧なギミックや繊細な彩りは八戸の魅力の一つでもある。今回は朔日町附祭山車組代表の近藤慶央との対談を通して、八戸の魅力を探る。

 

「山車を東京ドームで」

 

金入健雄理事長(以下、金入):

お祭りの事を掘り下げて伺いたいのですが、お祭りに携るきっかけと、今までどのようにお祭りにかかわってきたのかを教えていただけますか。

 

近藤慶央(以下、近藤):

子供の頃からお祭りには参加していたので、自然に山車づくりに家族ぐるみで携わっていました。子供のころは太鼓をやっていたのですが、高校を卒業したあたりから山車作りに参加するようになりました。東京の大学に進学したのですが、夏休みには帰ってきて山車作りに参加していました。

 

金入: 最近、近藤さんの姿をテレビなどのメディアで見ることが増えていますが、三社大祭の山車組はもちろん、三社大祭自体のPRにもご尽力されていると思います。先日、東京ドームでお祭りのフェスに出演されていたようですが、三社大祭の広報はどういったことをされているのかお聞きしてもよろしいですか?

 

近藤:去年は自分たちのお祭りが終わった後に東京ドームのふるさと祭り2019に山車を持って行って全国の方にアピールをさせていただきました。東京ドームはこれで3回、東京には4回山車を持って行っています。

 

金入:反応はどうでしたか?

 

近藤:青森=ねぶたのイメージが強いですね。「これはねぶたじゃないの?」「いえ違います」。「そうだよね、ねぶたじゃないよね」。というやり取りがあります(笑)

 

金入:その説明から入るんですね(笑)

 

近藤:はい。八戸の三社大祭という「山車」の説明から始まり、驚かれるのはその大きさですね。実際にねぶたも隣に来て頂いて比較もしていただけなのですが、来場された方は大きさ、豪華さで驚かれて、さらに仕掛けで動き始めるじゃないですか。そして「全部で27台出るんです」。「素人が全部作っているんですよ」。って説明して、ますますびっくりしてもらっています(笑)

 

金入:基本的なところからのPRが必要なんですね。

 

近藤:正直なところ、なかなか知っている方がいないんです。それでも、都内でのお披露目回数を重ねていくうちに、東京ドームで見てくださった方が、三社大祭に来てくれたこともあります。

 

金入:そういうきっかけって素晴らしいですね。それに、近藤さんのように山車を作ることもお祭りの一部というか、山車づくりにかかわっていく中で、色々な人が関係していくことがまちにとって意味があることなのかなと感じます。

 

近藤:三社大祭はほかのお祭りと違って、一企業がただお金を出してやっているわけではないんですよね。「まち」のおかげで成り立っているわけですよね。まちの人だとか、まちの企業とかさまざまなその土地の人、組織が支えていて、山車を作っている側もボランティアなので、すごく変わったお祭りだなぁと。

 

金入:まさに八戸の誇りですね!八戸青年会議所では今年もおまつり広場を開催させていただきますが、私たちは本年「市民の誇りとなる八戸スタンダードの発信~新しさの港から未来へ~」という方針を掲げています。三社大祭はユネスコ指定され、観光資源としても注目されていますが、単に経済効果だけを追及していく時代ではないのではないかと考えています。もっと八戸本来のまちにある魅力を我々が市民の誇りとして皆さんに知っていただくような運動をしていきたいなと思っていて、単純に企業からお金をもらって経済活動の一環としてお祭りやっているというよりも、まちにみんなが向き合うきっかけになり、一台の山車を作る事はたくさんの人が関わって一つのことを成し遂げていくという過程があって、まちをみんなが好きになっていくという事のヒントというか秘訣になるのでは、とあらためてお話を聞いていて思いました。今年のおまつり広場は「このまちのみんながHERO!」というテーマです。山車組のメインで表に出ている人だけじゃなく、おにぎりを作ってくれている人やお祭りを楽しみにしてくれている人、みんな一人ひとりが何十年もの歴史の中で参加して、今日のお祭りがあると思うんです。八戸市という歴史も同じで、たくさんの想いの積み重ねからいまがある。そういう想いでこういうタイトルつけさせていただいています。おまつり広場で一人ひとりがまちのHEROだと思ってもらえるような、まちを好きでまちの為に何ができるんだろうと思ってもらえるような広場にしたいなと考えています。お祭り自体、山車作り自体にそういう側面があるんだというのを、近藤さんや関係されているみなさんも、もしかしたら共通の想いがあるのかなと。

鬼の人形の歯を作る近所の子供たち

 

色塗り前の鬼の人形、全て手作り

 

「みんなが主役になれる山車作り」

 

近藤:いろんな方に支えてもらっているという気持ちは大事ですよね。みんなが主役になるという部分でも特に小さな子どもが山車を作りに来ていることですよね。幼稚園児だったり小学生だったり。本当にお祭りが大好きなんですよ。太鼓を叩く子も、何か手伝いたいわけです。そうしたら、何かしら一つ預けて、作ってもらう。それが山車の中についていると、自分の作った山車の上で太鼓を叩いているという…。気持ちの面で全く違ってきます。こういうのが僕らの山車作りの原点でもありますね。作ったものが展示してあって、いろんな人に喜んでもらえる。そういったところにやりがいがあると思います。

 

金入:その通りですよね。さらに、これからの三社大祭についてですが、引手不足など色々あると思うのですが他にはどのような課題というか問題がありますか?そして今後三社大祭を盛り上がっていくためにはどういった工夫が必要でしょうか?

 

近藤:実は、人手不足は私たちとしても一番に考えていかなければならない大事なところです。ここ数年で山車作りも参加する小学生の数が急激に減ってきていて、全体としての人数も減ってきています。お祭りっていうのは町内の垣根なく参加できるというのを知らない方が多いですね。かかわる人を増やすために山車を作っている人を「山車人」と名付けて市民に身近で感じてもらえるような企画をしていますが、少しずつたくさんの試みをしてみたいと思っています。現在、朔日町山車組の参加世帯数は26世帯しかないんです。それでも参加者が少しずつ増えてきているので、お祭りの楽しさをきちんと感じてもらえるようなこともしていかないといけないですね。あとは場所の問題ですね。今年27組のうち2つの山車組が移動しました。私たち自身も本来は中心街の町内なのですが、山車は石堂で作っていて…。自分たちの町内で山車を作れている山車組ってのは今はもうほとんどないんです。そうすると地域の子供たちも山車を作っている姿をあまり見れなくなるんですよね。中高生たちだって通いづらくなります。そういった事でどんどん人が減ってしまって、後継者に直接繋がっていかないんです。

 

金入:子供の時に山車を作らせてもらう環境が近くにあって、さらに、大人がそこで一生懸命山車作りをしている。こうした側面が身近にあって地域の人たちが山車作りに自然に参加していく…。場所がないことで変わっていく山車作りの文化を、どういう工夫で子供世代に感じてもらえるのかというのがテーマなのかもしれないですね。

 

 

 

「神事として、フェスティバルとして」

 

 

金入:八戸三社大祭とおまつり広場のかかわり方についてお聞きしたいのですが、山車を作っている立場からおまつり広場は、どのような感覚で見ていらっしゃいますか?

 

近藤:お祭りを盛り上げるという意味では、おまつり広場は大切な存在です。お祭りに山車だけあってもそれでは盛り上がらないですから。おまつり広場は、山車の展示会場の隣で開催されているじゃないですか。この距離感って、なんかいいなって思いますよね。一緒に盛り上がっていくので。僕らは是非おまつり広場に遊びに行きたいと思っているんですが、ちょっと何か買いに行くくらいしか出来なくて…。子供が集える場って、子供たちにとっては絶対に嬉しいですし、そういうのがないとお祭りっぽくないですよね。神事としての面と、フェスティバルとしての面、両方とも創出していかないとと思いますね。

 

金入:フェスティバルとしてのお祭りっていいですね。

 

近藤:そうですね。三社大祭って本来の神社の行列自体はすごく厳かなものであり、そういった部分とこういった賑わいの部分というのを一緒にやるといいのかなって。日によって結構見るものが違うじゃないですか。お通りはやっぱりちゃんとやるからお通り。あとは夜間運行とか前夜祭、後夜祭っていうのは神事とは全く関係ない純粋なフェスティバルの要素があるので、そういったところをどんどん盛り上げられたらと思います。

 

金入:今、生き方が多様化していてインターネットであったり、技術の発展だったりと、人の興味って本当に様々になっていると思います。その中でお祭りっていうのは数少ない地域の連帯感を感じられる唯一のものになっていくんじゃないかなと思っています。そういう意味で市民が市民であるために、お祭りっていうものの重要性が増していくと思います。私としては、近藤さんたちの山車作りをしている方々の思いだったりとか、山車作りの歴史だったりを発信するお手伝いをし、一緒に頑張っていきたいなという展望があります。近藤さんの考える展望を教えていただけますか。

 

近藤:お祭りって自分たちのまちを好きになってもらうきっかけになると思うんですよね。「八戸は良いまちですか?」。と聞かれたとき、自信を持って答えられるような人が意外と多くはないと思います。例えば、「八戸に来たら三社大祭があるよ!」。って自信を持ってもらえたら。三社大祭っていうのは色々な人がかかわる特殊なお祭りですから、「人のつながりがあるまちだな」。とか思ってもらえて、まちに対して自信を持てるきっかけを作れたらすごく嬉しいなと思います。僕らは山車組としては粛々と山車を作り続けるだけなので、八戸青年会議所の皆さんにはすごく期待感があります。

 

朔日町附祭山車組の皆さん

 

●八戸青年会議所とは

八戸市近郊に在住する20歳から40歳までの青年経済人の集まりで「奉仕」「修練」「友情」を活動の基本として「明るい豊かな社会の実現」を目指し、八戸のまちに住み暮らす人々や子どもたちの笑顔のために活動を続けている団体。今年で創立60周年を迎え、現在で約130名の現役会員を擁する。

 

●近藤慶央(こんどうよしてる)

青森県八戸市出身。朔日町附祭山車組 代表・山車組責任者。幼少の頃より山車作り・運行に関わる。八戸三社大祭で実際に運行された山車を東京ドームバージョンにアレンジし、八戸三社大祭を全国へPR。今年も朔日町山車組の代表として三社大祭を盛り上げる。

 

●金入健雄(かねいりたけお)

青森県八戸出身。第63代公益社団法人八戸青年会議所理事長。今年度は公益社団法人八戸青年会議所理事長として「新しさの港から未来へ~市民の誇りとなる八戸スタンダードの発信~」をスローガンにまちづくり運動を展開中。

 

最後にアンケートのご回答にご協力お願いします。

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